2005年03月14日

ジム・クラークとITバブルとシリコンバレー

久しぶりに書評を一つ。

先日、シリコングラフィックスやネットスケープの創設者
ジム・クラークの半生を描いた「ニュー・ニュー・シング」
(マイケル・ルイス著・日本経済新聞社)を読みました。

出版されたのは2000年で、「なぜ今さら」と思われるかも
しれません。実際、僕がこの本を初めて手にしたのも
3〜4年前。買ったはいいけれど、なんとなく読む気になれず
自宅の本棚にずっと置きっぱなしになってました。

ただ、昨年一年間アメリカに留学し、なおかつ
シリコンバレーの現場を見てきたこと、そして
現在就職活動をやっていて、自分の将来のキャリアを改めて
考える上で、起業家の一人生というものに非常に関心が高かった、
ということもあり、初めてしっかり読みました。

この本を読むまでは、ジム・クラークという人物は
よくある起業家にありがちな、勤勉でモーレツな
努力をして・・・みたいなイメージを抱いていたのですが
意外にも、その成功の要因は
彼の異常なまでの「お金に対する執着」と
気まぐれとも言えるほど「自分の好奇心に忠実であること」
に裏打ちされていることがわかり、ちょっと驚きました。

その彼の性格は、既存のエスタブリッシュな
企業経営者・メディア・ベンチャーキャピタルの連中には
当然受け入れがたく、「変人」呼ばわりされていたそうです。

この本は、彼のそういう「変人っぷり」をテーマとして
描かれていて、ストーリー自体も、彼が自分で作った世界初の
コンピュータ制御のヨット、ハイペリオン号の航海に執心している
話が中心。そして、その過程でネットスケープやシリコングラフィックス、
ヘルシオンの創業・株式公開にまつわるストーリーが散りばめられてる、
という構成になっています。

いわゆる普通の起業家の自伝とは違って、さながら小説を
読んでいるような感じで、楽しみながら読ませていただきました。
そういう意味では、「起業物語」ではないですね、この本は。

また、メディア的な観点で言えば、「バブル」という実態の
無いものが、どのように形成され、そして周縁の人々が
どのように踊らされていったか、というのがよくわかり、
勉強になりました。

ベンチャーキャピタル他機関投資家は、当初は
実績の無い新興企業に対して決して投資をしていなかった
にも関わらず、ネットスケープなどが収益を殆ど上げていない
状態で上場するやいなや、「次のネットスケープ」を求めて
何の根拠も無く「将来性」という名目だけで、次々と
投資をするようになった。

IT企業で働く従業員も、自分と同じような環境で
同じような仕事をしていた友人が、ある日突然、ミリオネアになる。
そんな状況で、冷静を保つことは難しいでしょう。

マスメディアも、盛んにシリコンバレーの熱狂を
ことさらに煽りまくった。

その時点で、これまでの物事の価値基準が崩壊してしまった、
と言っていいでしょう。

そんな中で、ジム・クラークは「未来がわかる男」
としてシリコン・バレーのカリスマになったわけです。

でも実態は、ジム・クラークはただ純粋に、自分の好奇心を
追求していただけに過ぎないのだけれど
誰もが自分の価値基準を見失っている状況においては
精神的拠り所として、信じることができる唯一の存在だった
のでしょう。

そのような状況において、ジム・クラークに多大なるお金と
優秀な人材が集まったのは当然の成り行きかもしれません。

もちろん彼の成功の影には、彼の類稀なる才能・センスなど
多々要因があると思いますが、そんな偶然・運が重なりあって
できあがったものであることも確かでしょう。


ボリュームが多いので読むのに一苦労ですが、
ぜひ皆さん、時間を見つけて読んでみてください。
posted by Yahnny at 18:04| Comment(0) | TrackBack(0) | マーケティング・PR | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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