聞き手:広告のトップをやっていた糸井さんが、広告が効かなくなった時代に、それだけの動員力を持つメディアを持っている、という視点で、是非、糸井さんのこれからの読みを聞いてみたいんですが。
糸井:ここは予告編としてほら吹いておくべきなんでしょうけど、分かってます。つまり、宣伝という概念もですね、昔、企業に宣伝部がなかった時代があるんですね。その頃は販売促進部なんですよ。そして、今は宣伝部の時代からIR(投資家向け広報)や企業広報の時代になっていますよね。そう考えると「宣伝広告」という、今なら当たり前で昔からあるような概念は、実はある限られた時代の生産物なんですよ。
コミュニケーションという歴史で見ると、宣伝広告という時代の次の時代に入っている。では、次の時代のコミュニケーションは何かというところで、僕は先にもうアメリカ大陸に上陸したつもりなんです。
聞き手:企業側もようやく対応を変えてきて、コーポレートブランドを管轄するセクションを作り、広報と宣伝部を合体させてPRと予算を一緒にして、さらにIRセクションをセットにして、と。投資家向けと消費者向けと社会向けのメッセージは同じところで、予算も一緒に、といった動きが出てますね。
糸井:やっとなったんですよね。ただ、まだ分からないのは、お金の取り方なんですよ。だからそこは、僕がそういうことをしたければ、僕がその世界で孫正義になるんですよ。そういうことがしたければ。でも、自分がしたいのはそういうことじゃないなという気持ちがあるんですよ。
僕も既に広告の時代は終わっていると思っていて、なぜならインターネットというメディアが登場したことによって、企業側のウソ、企業側の論理っていうのはもはや通用しない時代でしょう。
で、このところ「ブランド」「ブランド」って騒がれているけれど、ブランドは広告っていう企業による主観的なメッセージから生まれるものではなく、それを利用する消費者やメディアという客観的第三者の立場からの意見が最終的に、その企業イメージを形作っていく、それがブランドなんじゃあないかなと思います。じゃあどうやってブランドを作っていくかというと、糸井氏の言うように企業側のブランドっていうのは「理屈」じゃなくて「宗教」であって、じゃあその企業のプロダクト・サービスにどれだけ共鳴してくれる「信者」を作っていくか、これが一番重要なんじゃないかと。インターネット時代の消費者っていうのは、横で繋がってますから、一部の影響力のある消費者の反応が得られれば、そこから爆発的に普及していく。
そのためには企業側は首尾一貫したメッセージで常に「私たちはこういう存在です」というのをアピールしていかなくてはいけない。それは広告の役割ではなくて、インタビューでも言ってたけど広報や宣伝の領域であり、それらを通してどう消費者と“信頼関係”を築いていくか、っていうのが今後の企業における重要命題になっていくんじゃないかと思う。
・・・で、どこまで割引してくれますか?