3月1日のThe Wall Street Journalでは、ビジネスにおけるblogの効用について、
特集記事を掲載。非常に面白かったので全文翻訳記事をアップします。
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Blogs Keep Internet Customers Coming BackサンフランシスコにあるDVDレンタルショップ
GreenCine社が2年前に
オンライン雑誌を立ち上げたとき、彼らが期待していたのは、映画批評や映画祭のレポート、映画制
作者のインタビューなどにより映画ファンが活気付き、固定客に新作映画をアピール
でき、新規顧客を増やすことだった。
それは効を奏し、その会社のblog
「GreenCine Daily」はGreenCine社のWebサイトの
アクセス数の20倍=月間100万アクセスを記録するようになった。さらに、2人のblog
ライターによって批評された映画は顧客の間で奪い合いになった。マーケティング活
動をほとんどしていなかったにも関わらず、メンバー数と売上げは前年の2倍になっ
た。
blogがビジネスツールになる時代がやってきたのである。
Pew Internet & American Life Projectによると、現在、約8万人のアメリカ人が
blogを発行しており、32万人がそれらを購読しているという。公開日記として始まっ
たblogが、いまやオンラインビジネス戦略の重要なツールになっている。なぜなら、
blogはユーザー同士のプライベートなコミュニケーションを可能にし、定期的に企業
のWebサイトに訪問させることができるからである。
■新たなチャネル
規模の大小に関わらず、どの企業でもblogは利用できるが、なかでも中小企業が一番
blogを活用できるだろう。なぜならblogは名の知れない中小企業の名前を認知させる
ことができ、(blog以外で)普通に製品やサービスを売っていたならば得られないよ
うな、多くのユーザーを集めるチャンスを提供してくれるからだ。
Forrester Research社のCharlene Lee氏は「マーケティングというより、これは新た
なコミュニケーションの方法だ」と述べる。他の出版物と同様、過剰な商業主義を避
け、付加価値があり、かつ信頼性のあるコンテンツを提供するならば、blogは最も多
くのユーザーを引き付けることができる。
同様にblogは、伝統的なオンラインマーケティング戦略(例えば面白みが無く、会社
案内のようなWebサイト、或いはスパムフィルターでブロックされてしまう可能性が
あるメールマガジンの発行)よりも効果的だと思われる。
■訪問者の増加
blogを始めれば、Webサイトの訪問者を数ヶ月以内に飛躍的に増加させることができ
る。この理由はサーチエンジンブームによるところが大きい。クオリティーが高い
blogは、他のWebサイトがこぞってリンクするため、検索結果で上位に上がりやすい
傾向がある。Googleのような検索エンジンは、このようなリンクを「人気投票」とし
て捉え、検索順位を決定するためのツールとして利用している。
また他の企業同様、GreenCine社もReally Simple Syndicaton、通称RSSと呼ばれる技
術を使って、自社のblogを他のサイトと「同期化」することにより、自社のblog以外
のユーザーからのアクセスを増やしている。
■アドバイスを提供できる魅力
blogによる実際の収益面での効果を計測するのは難しいが、多くの中小企業経営者は
blogを「ユーザーにアドバイスを提供する」もしくは「その分野における権威として
名声を築く」ためにblogを利用している。
例えば、ワイン業界専門のPR会社
Wark Communications社の経営者、Tom Wark氏は
自
分のblogにて、ワインに関連する様々なトピックについて論評しているが「昨年の11
月にblogを始めて以来、アクセス数は着実に増え続け、1日200件〜300件のアクセス
を記録、自社のWebサイトのアクセス数の2倍に達した」と述べている。
収益面での効果は計測できないが、彼のもとにはblogの読者である業界関係者やワイ
ン愛好者から日々たくさんのメールが届いている。彼曰く「この3ヵ月で、過去1年半
を超える数の見込み客にコンタクトすることができた」。
また、自動車の改造業者
Red Line Performance & Restorationの経営者であり、自称
"hot rod"と名乗るDavid C.Atkin氏は、中古のコルベット、ムスタング、カマロの改
造をテーマに
blogを書いている。Atkin氏は3ヶ月前に
blogをスタートし、現在では、
自社のWebサイトのアクセス数の2倍=1日約300人の訪問者があると言う。「今のとこ
ろblogによって新規顧客を獲得したことはないが、やがて年間で1件〜2件(※)の売
上げに繋がるだろう」、と彼は述べている。
※ちなみにこの業界では、1件の仕事の報酬が40,000ドル〜50,000ドルにも上るた
め、年間2件の売上げは好況を意味する
■インタラクティブ性
さらに、企業によるblogの利用法としては、blog上で訪問者が発言することができる
「コメント機能」を使って顧客との直接の対話ができる、ということが挙げられる。
大別して
@混乱の回避や、コメントへの返信が面倒、という理由で訪問者のコメントを選別し
て掲載したり編集したり企業
Aコメントの編集をせずそのまま掲載している企業
とに分かれる。
New Yorkでオンラインマガジンとお見合いサイトを運営している
Nerve.com社では、
昨年の5月より、6人の参加者にblogを利用させ、彼らを対象に検閲ナシ・Reality TV
スタイルの
「書き込みコンテスト」を開始した。コンテストの参加bloggerは「オン
ラインお見合いの終焉」「競合サイトを通じてアレンジされたお見合い」といった
様々なテーマに関してエントリーをし、(読者がコメントを書く)feedbackコーナー
を盛り上げる。
「愛を巡る“真実”の悲喜劇はアクセス数を吊り上げ、昨年5月にコンテストを開始
以来、売上げが50%増加した」と、CEOのRufus Griscom氏は述べている。
「編集ナシのfeedbackは、あなたの会社の美しい製品が人々によって“落書きされ
る”ことに等しい」とGriscom氏はおどける。しかし「我々が、読者に対して(コメ
ントを通して)自由におどけたり、誠実になったり、考察的になったりする機会を与
えれば、その結果は必ず面白いものになる」と言っている。
■専門的なPR手法は使わないこと
これまで数々の中小企業に対してオンラインマガジンの開設支援を行ってきたWigley
and Associates社の"blogコーチ"Griff Wigley氏によれば、「読者を増やすために、
blogはクールであったり、唱導的であったり、面白かったりする必要は無い」。しか
し、「"本物"であり、有益な情報を提供しなくてはならない」。顧客との関係を構築
するためには、blogger個人の顔が見える「パーソナルタッチ」が重要、とりわけ中
小企業や地域のコミュニティーなどにとって非常に重要である。
逆に、作者の顔が見えず、大企業で作られていると思われるようであれば、信頼性を
築くことは難しいだろう。
「もしあなたが(大企業が使うような専門的な)PR技術を取り入れようとするなら、
読者を失うだろう。なぜなら読者は、それが本当のあなたではないことを知っている
からだ」
■パーソナリティーが重要
New Yorkのネット広告代理店DoubleClick社のresearch manager兼blog expertである
Rick E.Bruner氏は「パーソナリティーは人々を引きつける重要な要因の一つだ。」
と述べる。彼自身、blogのビジネス活用法をテーマとしたblogを開設しており、企業
には注意深くbloggerを選ぶようアドバイスしている。
ヨーグルトメーカーの
Stoneyfield FarmのWebサイトにある5つのblogのうち最も人気
があるblog
"The Bovine Bugle"では、Stoneyfield Farmで使用しているオーガニック
ミルクの供給業者の一つHowmars family farmの日常生活が綴られている。オーナー
のJonathan Gates氏は、子牛用の水飲タンクにできた氷を壊した話や、新たな子牛が
生まれてワクチンを注射した話などを、彼のレポートと共に写真付きで紹介してい
る。
「彼はStoneyfieldの宣伝すらしてない。たとえ宣伝したとしても気にかけないだろ
う」とはStoneyfield Farm CEOのGary Hirshberg氏。彼は、昨年Howard Deanの大統
領選にかかわり、blogが信頼関係や忠誠心を築くのに効果的であることを目の当たり
にした後、自社のWebサイトで複数のblogを立ち上げることを決めた。
■消費者との“接点”
「Blogは、我々が消費者と繋がることができ、いわば消費者との接点を強めることが
できる手法の一つだ」とHirshberg氏は言う。
Hirshberg氏は「従業員数245人の会社で、blogがどれだけの収益に貢献するのかわか
らない」と述べる。しかし、小額のマーケティング予算にも関わらず、売上げは過去
11年間で年間平均23%向上し、Stoneyfieldは、Danon社の「Danon」 と General
Millsの「Yoplait」に続き、第三位のヨーグルトブランドになった。彼は「普通とは
違ったこと」を進んでやってきたからだ、と評価する。
blogを通じたコミュニケーションは、「あなたの家のキッチンに座っている誰かと同
じぐらい親密で個人的なもの」とHirshberg氏は述べる。「そのような対話をするこ
とができることが、blogの大きな特典だ」。
元記事:Blogs Keep Internet Customers Coming Back